子どもを褒める言葉は沢山ありますが、褒めることは効果があるのかと、悩む保育士は多いと思います。
私が保育実習に行ったある保育園で、保育士の指導を見て、あんなに叱ったり怒ったりすることはできないと自信を無くしてしまったことがありました。
そして、保育士になってからも、子どもに対してどのような声かけをしたらいいのかを悩むことが多く、叱ったり褒めたり試行錯誤しながら、ようやく自分が子どもに足してこれなら伝えられるし、子どもにも伝わっているという手ごたえを感じることが出来るようになってきました。
確かに、園の方針や一人一人の保育士の性格・保育観によって、指導の仕方は様々ありますが、
子どもを褒める言葉には、どのような言葉がありどんな効果が期待できるのかを検証していきたいと思います。
子どもを褒める言葉子どもの気持ち
子ども目線で考えると、叱られるよりは褒められた方が嬉しいのは当たり前のことです。
褒められた友だちを見て、同じことをすれば自分も褒めてもらえると考え、真似をしようとする子どもは多いです。
褒めることは悪いことではありませんが、メリットだけではないかもしれません。
褒めてもらうことに慣れてしまうと、褒めてもらう事が目的となってしまうからです。
数年前のことですが、私が年中組に担任の代わりに入った時に、「先生、見て!すごい?」とか「上手?」などと、複数の子ども達から確認をされることが多いと気づいたことがありました。
私は子どもから聞かれる度に「スゴイね!」「上手、上手」と言っていましたが、この様子は『先生褒めて、私すごいでしょう』と言ってほしくて確認しに来ていることだと感じました。承認欲求事態は決して悪いことではありませんが、1人2人の話ではなくクラスの半分くらいの子ども達からでした。
これは、また別の課題が含まれているのでここでは詳しくは話しませんが、私が言葉の使い方について考えさせられた出来事でした。
時には、褒められないこともあるわけですが、その時は褒めてほしいとアピールしてきます。
また、叱られる経験が無い子どもについては、何故叱られたのかという原因を考える事よりも、
叱られたショックで萎縮してしまうことがあります。
これらを考えると、どちらもバランスよく出来るに越したことはありません。
子どもを褒める言葉声かけ
保育士は、子どもを褒めたいと思っていますが、危険なことや迷惑をかける行動や言葉に対しては、叱ったり注意します。
しかし、頑張っている姿は認めたいし褒めたいとアンテナを張り意識しています。
中には、「おだてている」「よいしょしている」と勘違いする保育士もいるので、
私が「褒める」時には、どのような言葉を使うかなどの配慮をしていきたいと考えています。
子どもを褒める言葉褒め方のコツ
では、どのように褒めると効果があるのか褒め方のコツを検証していきます。
私は、「褒める」「叱る」は、子どもを指導していく上で、避けて通れない気がしていますが、
「褒める」ことに配慮し「叱る」ことにも注意が必要となると、バランスよく指導していく事が
大切だと考えます。
そこで、「褒める」「叱る」どちらかに偏ることなく、子どものやる気を育てる方法を調べてみると、アドラー心理学にたどり着きました。
アドラー心理学では、「共感する」という言葉や「勇気づけ」という言葉にが使われています。
では、どのような時にどんな「共感する」言葉や「勇気づけ」の言葉をかけたらいいのかを
私が経験したことを元に見ていきたいと思います。
一人でできた時
子どもが一人でパジャマを着ることが出来たとします。
褒める場合は、「すごいね」「えらいね」となりますが、
共感する場合は、「一人で着ることが出来て嬉しいね」「一人で出来るようになって
先生は嬉しいな」という風に、子ども自身が主体的にやってみたことを認め、その結果子どもと
一緒に出来た喜びを共有し、自信につなげてきます。
私が0歳児の担任をしていた時のことです。
Aちゃんは6月生まれで、年度末の2月には1歳8ヶ月になっていました。
ズボンを脱ぐ練習が始まった12月の頃は、足にズボンが引っ掛かり脱げないと泣いていましたが、
2月には自分で格闘しながらズボンを脱ごうとするようになっていました。
そして2月のある日、私の目の前に裏返ったズボンを差し出してきました。
その顔は、とても自慢気です。
「自分で脱げたの?一人で出来るようになって、嬉しいね!」と、声をかけると笑顔で大きくうなずきました。
その日以来、着替えの時は保育士の声かけが無くても、自分から積極的にするようになりました。
お手伝いをしてくれた時
また、子どもがお手伝いをしてくれた時には、「すごい」「えらい」と言うよりも、
「お手伝いをしてくれて、ありがとう」「お手伝いしてくれたから、早く片付けることができたよ。助かったよ」などと言う言葉かけをすると、「共感する」「勇気づけ」となります。
「ありがとう」「嬉しい」「助かった」などは、勇気づけの言葉になりますので、自己肯定感が育つことにつながります。
自己肯定感の高い子どもは、嫌なことでもそれを乗り越えようとする力があります。
保育の現場では、まさに生きる力を養い育むことが大切なので、この「共感する」「勇気づけ」
という言葉の意味を知ったことは、私が保育士として子どもに接する上でとても大きい出来事でした。
私が年中組の担任をしていた時のことです。
Yちゃんはどちらかと言うと、ふざけることが大好きな男の子ですが、友だちとのトラブルが続く日が多くなっていました。
そこで、何か気分転換できることはないかと考えていた時です。
園長先生のところまでお使いを頼むことにしました。
それは、園長先生がクラスに来た時に忘れて行ったタオルを届けに行くというものでした。
「Yちゃん、このタオル園長先生の忘れ物のタオルだけど、困っていると思うから届けてほしいんだけど・・・」と言うと、快く引き受けてくれました。
園長先生に「ありがとう。タオルが無くて、探しているところだったよ。届けてくれてありがとう」と、お礼を言われ、クラスに返って来てからも「Yちゃん、有難う。先生が忙しくて持っていけなかったから、助かったよ」とダブルでお礼を言われ、照れくさそうにうなずくYちゃんでした。
こんな顔をするのかと思うほど照れていましたが、嬉しくてたまらなかったのだと思いました。
私は、「共感する」という事や、「勇気づけ」の言葉は、子どもだけでなく保育士の気持ちも楽にしてくれる言葉だと感じました。
子どもを褒める言葉まとめ
私は、「褒める」「叱る」はケースバイケースで効果があると思いますが、何よりも大切なのはバランスだと思います。そして、それ以上に「共感する」ことや、「勇気づけ」が大事だと感じています。
これらを知ることで私自身がそうであったように、保育士の声かけが変わり、保育士が変わると子どもの行動や言葉が変わってくることを目の前で見てきたからです。
褒めるだけ、叱るだけの保育を見直し、子どもに共感し勇気づけをしていきながら
子どもの成長発達を認め喜び合える関係を築いていきたいものです。
そして、そのことで保育士自身の気持ちの負担感が軽減して、子どもと新しい関係を築けることは、保育士の醍醐味かもしれないと思いました。
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